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札幌家庭裁判所 昭和50年(少)20168号 決定

少年 G・N(昭三一・三・一一生)

主文

少年を札幌保護観察所の保護観察に付する。

理由

(非行事実)

少年は

一  A(当二八歳)、B(当二〇歳)、C(当一九歳)、D、E(いずれも当二〇歳)、F(当一八歳)、G、H(いずれも二一歳)、I、J(いずれも二一歳)、K(当一八歳)、L(当二三歳)と共謀のうえ前日の深夜喧嘩して負けた相手のやくざの若者らを襲撃して火炎びんを投てきしようと企て、昭和五〇年八月二一日午前〇時五〇分ころ札幌市○○区○○○×丁目附近路上において、その直前A、B、Hらが同区○○○×丁目○日○業○式○社駐車場において一升びんサイダーびんにガソリンを入れ布切れをびん口にさしこんでこれを点火装置として製造した火炎びん四本、サイダーびん一二、三本位を数本ずつ普通乗用自動車五台の座席に分散積載したうえ各自分乗して(少年は自己所有の普通乗用自動車○××○××××号を運転して)これを所持し、もつて他人の身体に対し共同して害を加える目的をもつて兇器を準備して集合し

二  同年七月二三日午後〇時五〇分ころ札幌市○○区○○○×条×丁目附近道路において、午前七時から午後一〇時まで右折禁止の箇所であるのに過失により標識をみすごし普通乗用自動車を右折進行させ

三  同年八月一〇日午前〇時三〇分ころ余市郡○○町○○町×丁目附近交差点道路において信号が赤色であるのにこれを無視して普通乗用自動車を進行運転し

たものである。

(適条)

一の事実 火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反同法三条一項

兇器準備集合 刑法二〇八条の二

二の事実道路交通法違反 同法八条一項四号、一一九条一項二項

三の事実同法違反 同法七条四項一号

(主文掲記の保護処分に付する理由)

本件一の非行は、札幌市中心部の○○公園で夏祭の盆踊りが終つた後やくざの若い者が警察官に悪ふざけをしていたいわゆる暴走族に文句をつけ、その周辺にいた自動車好きの若者の一人を殴つたことから喧嘩となり、負けた暴走族側が報復のため火炎びんによる襲撃を思いたつたものである。少年自身は途中から火炎びん投てき行為をやめているけれども、他人の身体に火炎びんを投げつけるという極めて危険な企てに、その場の雰囲気にのまれたとはいえ何の抵抗もなく進んで参加したのであつて、反社会性の強い責めらるべき行為である。

少年は暴走族グループの正式のメンバーではないが、車に対する関心が非常に強く本年六月からしばしば夜○○公園に出入りして暴走族と付合つたり、路上の女の子に声をかけて車に拾つて女の子と付合つたりしていた。また少年は信号無視をはじめとする数回の道交法違反を繰返し、直近五件の反則金についても父からその分の金を受取りながら自動車に関する費用につかつてしまうなど遵法意識は低い。

少年の両親は健在で、父は会社を経営し、生活も裕福である。父母とも少年を甘やかし、高価な車を少年に買与え、少年と同世代の者の給料に相当するガソリン代その他の運転経費を少年のために負担し、又両親の間柄も必ずしもよくなく少年に対する躾も一貫していない。

少年は、火炎びんを使用しなかつたため当初は事件に対する認識も甘かつたが現在ではこれまでの行動を反省し、今後真面目に通学し、父の仕事も手伝うことを誓約している。これらの状況に少年の性格成人共犯者に対する処分(少年と同様の共犯者は罰金)等諸般の情況を考慮すると、少年を保護観察に付し交友関係、環境の調整をはからせ、遵守精神を養わせるを相当と認める。

(結論)

少年法二四条一項一号を適用し、少年を保護観察に付し、主文のとおり決定する。

(裁判官 丹宗朝子)

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